皆さんこんにちは!
株式会社駒館石商の更新担当の中西です!
さて今回は
大切な家族を偲ぶ~名前彫り職人の矜持~
墓石に名前を刻むという行為は、単なる作業ではない。
それは、人の“生”と“死”を石に記す行為であり、永遠への祈りを形にする仕事である。
私たち「墓石彫刻職人」は、依頼主の想いを、わずか数文字に凝縮させる。
その一文字一文字が、家族の歴史を、そして心のつながりを永遠に刻み続ける。
墓石への刻字には、主に「建立者名」「没年月日」「戒名」「俗名」「享年」などがある。
その文字は、ただ読めるだけではなく、「魂が宿るように」刻まれなければならない。
彫刻は、石の種類・硬度・目の方向によって彫り方を変える。
花崗岩(御影石)なら硬く、吸い込まれるような彫り味。
安山岩なら柔らかく、刃先のわずかな角度で文字の表情が変わる。
私たちは、その石の性格を見極めながら、刃物と空気の音を聴く。
「この石はどんな線を望んでいるか」
その問いかけの中に、職人としての感覚が磨かれていく。
かつてはすべて“ノミと金槌”による手彫りだった。
今では、サンドブラスト機やコンピュータ制御の彫刻機も導入されている。
しかし、最終の仕上げはやはり人の手による。
手彫りの強みは「線の呼吸」である。
筆で書かれた書体には、止め・はね・払いがある。
それを石に再現するには、単なる掘削ではなく“筆の動きを理解する”必要がある。
例えば、戒名における「心」「想」「愛」といった文字。
どれも線の勢いと余韻が命だ。
それを正確に刻むには、筆跡をなぞるのではなく、「書道を刻む」という心構えがいる。
一度刻んだ文字は、消すことができない。
それだけに、私たちの責任は重い。
誤字はもちろん、文字の位置・バランス・深さ——すべてが墓石全体の印象を左右する。
そして何より、その墓が百年先まで人々の祈りの場であり続けることを意識しなければならない。
「一文字の重さ」が、他のどんな業種よりも深いのがこの仕事だ。
依頼に来られる方の中には、涙をこらえながら原稿を差し出す人もいる。
その紙には、亡くなった方の戒名、命日、そして生前の名が書かれている。
そこに込められているのは、言葉にできないほどの愛情と喪失感。
その想いを受け取る以上、職人は決して“作業者”ではいられない。
一文字に向き合うとき、心の中で手を合わせる。
「どうか、この線が届きますように」
そう願いながら、ノミを打つ。
名前彫りとは、石を彫ることで、人の人生を記録し、家族の絆を未来へつなぐ仕事である。
機械化が進んでも、この仕事の本質は変わらない。
それは、“石に心を残す”という、人間の根源的な営みだからだ。
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